AI・ブロックチェーン技術をビジネスに!要件定義から開発まで徹底支援
エキスパンド合同会社

【ビジネス思考で読み解く古典物理学】現代のAIには実現できない「発見の力」

はじめに

17世紀に確立された古典物理学の歩みをなぞると、現代のビジネスやAI活用にも通じる“発見力”と“モデル構築力”の重要性が見えてきます。

今回は、古典物理学の主な発見を、ガリレオ、ケプラー、ニュートンといった科学者たちの業績に沿って振り返りながら、その思考法が現代ビジネスにどう応用できるのか、またAIに再現できるのか?という視点で読み解いていきます。


1. ガリレオ・ガリレイ:観察と相対性の発見

ガリレオ・ガリレイ(1564–1642)は、「物体の落下速度は重さに関係しない」という実験結果で、自然界の法則が直観や常識と異なることを示しました。

また、運動についての深い洞察も残しています。特に重要なのが以下の2点です:

  • 慣性の原理:「外から力が加わらない限り、物体は等速直線運動を続ける」
  • 相対運動の原理(ガリレイの相対性原理):「一定速度で動いている物体について、それが動いているのか止まっているのかは、外部基準がなければ区別できない」

🚅 新幹線の車内で静かに座っているとき、動いている実感がないのと同じです。

この発見は、後のニュートン力学やアインシュタインの相対性理論にも繋がる、「運動の本質とは何か」を考える重要な視点でした。


2. 円運動モデル:ケプラー以前の「完璧な理論」

プトレマイオス(2世紀)

  • 地球を宇宙の中心とする天動説を唱えました。
  • 惑星の複雑な動きを「円に円を重ねる(エピサイクル)」ことで説明しました。

コペルニクス(1473–1543)

  • 太陽中心の地動説を復活させました。
  • しかし、惑星の軌道は依然として「円」でなければならないと考え、複雑な補正を残しました。

当時の思想では、「天は完全な存在」であるため、円運動こそが宇宙の秩序を表すと信じられていたのです。

📌 結果として、観測データに無理に理論を合わせる“帳尻合わせの科学”が続いていました。


3. ヨハネス・ケプラー:円から“楕円”への革命

ケプラー(1571–1630)は、天文学者ティコ・ブラーエの観測データをもとに、惑星の軌道が楕円であることを突き止めました。

🔭 ケプラーの三法則(要約)

  1. 惑星は太陽を焦点とする楕円軌道を描く
  2. 惑星と太陽を結ぶ線が、単位時間に描く面積は常に一定
  3. 惑星の公転周期の2乗は軌道の長半径の3乗に比例する

これは、「宇宙の秩序は円ではなく、自然の姿に忠実な形として楕円である」という、人類の宇宙観を根本から覆す発見でした。

🔍 ケプラーの功績は、観測結果に合わせて理論を“補正する”のではなく、**「理論そのものを変えた」**ことにあります。


4. アイザック・ニュートン:運動の三法則とF = ma

ニュートン(1642–1727)は、ガリレオの慣性の考え方とケプラーの軌道理論を統合し、あらゆる物体の運動を支配する「力」の法則を確立しました。

⚙ ニュートンの運動の三法則

  1. 慣性の法則
     物体は外から力が加わらない限り、その運動状態を保つ
  2. 運動の法則
     加速度は力に比例し、質量に反比例する
     👉 数式で表すと:F = ma
     (F=力、m=質量、a=加速度)
  3. 作用・反作用の法則
     すべての作用には、それと等しく逆向きの反作用がある

📈 F = ma は、現代ビジネスにも応用可能

  • 組織を変えるには「力(F)」が必要
  • 市場が大きく重ければ(mが大きい)、同じ力では動かない
  • 結果(a)を得るには、「力の大きさ」と「働かせる方向」が鍵になる

つまり、ビジネスでも「加速度=力 ÷ 質量」という視点で戦略を設計することができるのです。


5. この発見はAIにできるのか?

AIが得意なのは、「Fとaの関係を大量のデータから導き出すこと」です。
しかし、AIには次のような限界があります:

  • 「力とは何か」「なぜ動くのか」といった概念の定義ができない
  • 「円ではなく楕円かもしれない」といった常識を疑う発想ができない
  • 「どの変数を重要とするか」を自分で選ぶことができない

つまり、AIは法則を“発見”することはできないのです。できるのは、既存のモデルに基づく予測やパターンの抽出に限られます。


6. ビジネスへの応用:「発見力」が競争力になる

現代ビジネスでも、以下の力がますます重要です:

  • 前提を疑う力(ケプラーのように円を捨てる)
  • 構造をシンプルにモデル化する力(F = ma のように)
  • 行動と結果の因果関係を設計する力(作用・反作用のように)

これらは、AIにもアルゴリズムにも真似できない、「人間の創造力」に他なりません。


おわりに

古典物理学は、自然を理解するための「モデル思考」の原点です。
ガリレオが相対性を発見し、ケプラーが円の呪縛を断ち切り、ニュートンが力を数式で定義したことで、世界は「見えるもの」から「予測できるもの」に変わりました

私たちも、目の前のビジネスの現象に対して、「どんな力が作用しているのか?」「どうすれば動かせるのか?」という視点で向き合うことが、新しい発見と変革の第一歩となるのではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です