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【AIでは到達できない発見力】りんごと月、そして重力を疑った人間の思考

はじめに

「リンゴが落ちるのを見て万有引力を発見した」
これはニュートンにまつわる有名な逸話ですが、実際の彼の発見には、もっと深くて本質的な疑問があったのをご存じでしょうか?

この記事では、ニュートンやアインシュタインが持っていた“当たり前を疑う視点”が、なぜ現代のAIには再現できないのか、そしてそれがどんな意味をもつのかを考察します。


リンゴは落ちる、月はなぜ落ちない?

ニュートンが万有引力を発見するに至った動機は、「リンゴがなぜ地面に落ちるのか?」という素朴な疑問だけではありませんでした。

彼の真の着眼点はこうでした:

「リンゴは地面に落ちるのに、月はなぜ空にとどまり続けているのか?」

この問いに対して彼は、月の軌道運動を詳細に計算しました。そして次のような事実にたどり着きます。

月も地球の引力に引かれて“落ちている”

しかし同時に横方向にも高速で動いているため、地球に衝突せずに“落ちながら回り続けている”

つまり、リンゴも月も、地球の重力の支配下にある同じ「物体」であり、「天と地」は同じ法則で説明できるという画期的な発見が生まれたのです。

これは、「空の月と地上のリンゴは別物」という当時の常識を疑った、ニュートンの鋭い視点から始まりました。


アインシュタインが疑った「重力は力なのか?」

ニュートンが重力を「力」と定義したのに対し、アインシュタインはその定義そのものを見直しました。彼が持った問いは、こうです。

「もし太陽が突然消えたら、地球はその瞬間に軌道から外れるのか?」

もし重力が“力”であり、しかも瞬時に働くものなら、太陽の消失と同時に地球の軌道も変わるはずです。しかし、それは光の速度を超えた情報伝達が起きてしまうことになります。

この矛盾を解決するために、アインシュタインはこう考えました:

重力は「力」ではなく、空間のゆがみ(時空の湾曲)である

質量のある物体が空間を歪め、その歪みの中を他の物体が自然に動いている

こうして彼は、一般相対性理論を導き出し、重力場や重力波という概念を生み出しました。


“前提を疑う力”が、科学を前進させてきた

ニュートンもアインシュタインも、ただ数式を操作したのではありません。彼らは、

リンゴと月を同じものとして捉えた

太陽と地球の関係から空間の性質を再定義した

といったように、常識を超えて前提を疑い直す力を持っていました。
そして、彼らの仮説はやがて観測や計算と一致し、人類の理解を新たな段階へと導きました。


AIは発見できるのか?できないのか?

現在のAIは、惑星の軌道や未来の天体の位置を、驚くほど高精度に予測できます。
しかし、ここに決定的な限界があります。

「月がなぜ落ちないのか」や「重力とは何か」を、自ら問い、定義し、発見することはできない。

実際に、ある研究(出典:ハーバード大学とMITの研究チームによる発表)でもこうした指摘があります:

「AIは惑星の運動を学習して未来を正確に予測できるが、その背後にある万有引力という法則を自ら発見することはできない」

同様に、重力を「空間の歪み」と見なしたアインシュタインのような本質的な再定義も、現在のAIには困難です。


それでも、AIが法則を発見する日が来たら?

ただし、近い将来、AIが物理的な現象の背後にある法則を自動的に見出すような技術が開発されるかもしれません。

データから意味のある抽象モデルを構築し

実験結果と矛盾なく原理的説明を導き出すようなAI

そんな存在が登場したとき、人間が何千年かけて築いた科学の原理が、一気に解明されてしまう可能性があります。


おわりに:その時、人間は何をするのか?

AIが自然法則すら発見するようになる時代。
それはもはや、科学が人間の手から離れるということを意味するのかもしれません。

果たして人間の役割とは何なのか?
問いを立てる力、意味をつくる力、そして美しさや倫理を問う力――
それこそが、人間にしかできない“次の価値”になっていくのではないでしょうか。

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