当社は、ごく少人数でシステム開発案件への参画、グループ会社の運営、複数の新規事業の検討までを並行して回しています。この夏からAIエージェント「Claude Cowork」の活用を本格化したところ、日常業務のかなりの部分をAIに任せる働き方が定着してきました。
「AIって、実際の仕事にどこまで使えるの?」と聞かれることが増えたので、この記事では、いま実際にAIエージェントに任せている業務を棚卸しして、種類・概要・件数がわかる形でご紹介します。具体的な取引先名や案件名、金額は伏せていますが、業務の中身はすべて実際に動いているものです。
AIエージェントは、作業のたびに自分で「業務メモ」を残しながら仕事を進めます。このメモが現在30件を超えており、内容を分類すると、任せている業務はおおむね次の6分野に整理できます。
以下、それぞれの中身を見ていきます。

いちばん意外に思われるのが、顧客案件まわりの仕事です。当社は大手ITサービス企業経由で官公庁系や金融系のシステム案件に参画していますが、たとえば設計ドキュメント(画面レイアウト資料など)のレビューでは、過去の指摘をもとにチェック観点をAIと一緒に型化しておき、横展開されてくる同種の資料を同じ観点で機械的に確認しています。案件の課題一覧のフォーマット整備や、定例会議のアジェンダ準備も毎回AIの担当です。
契約更新のタイミングでは、作業確認書への追記や、見積書一式(表紙・明細・入館申請書)の作成といった事務書類をAIが組み立てます。こうした繰り返し発生する作業は「スキル」と呼ばれる手順書のパッケージにしてあり、次の更新時期が来たら同じ品質で再実行できるようにしています。毎月の稼働管理表や作業報告書の作成、委託先からの報告書の受領チェックといった月次の定型事務も同様です。
提案活動では、AI開発の取り組み紹介資料や、開発体制のコスト最適化提案といった資料作成をAIと進めました。ここで重要なのが情報管理で、「他のお客様の案件情報は匿名化してからでないと資料に載せない」というルールを明文化し、AI自身に守らせています。
新規事業の検討は現在3テーマが並行中です(飲食系の協業業態、金融テック系の新会社構想、宿泊系のサブ事業)。おもしろいのは、検討の進め方そのものをAIと標準化したことです。ヒアリングから成立性検証、収支シミュレーション、投資判断までを4つのフェーズと3つのゲートに分けたプロセスを定義し、どのテーマでも検討計画・タスク管理表・シミュレーション・投資判断メモという同じ成果物セットを作る型にしました。
経理・財務は、AIエージェントがもっとも活躍している領域です。会計SaaSのfreeeとAPI連携させており、全体収支計画のExcelは週次で自動同期されます。将来の見込み取引26件をExcelからfreeeへ一括登録したり、決算に向けて交際費・会議費あわせて200件超の経費を精査したりといった、手作業ならまとまった時間を取られる仕事も任せられます。経費精査では、カレンダーの会食予定と会計データを突き合わせて記載を補う、といった複数ツールをまたぐ確認もAIがやってくれます。ほかにも、給与・社会保険まわりの帳簿整理、役員立替経費の精算、賃貸契約と帳簿の突合など、細かい論点の多い仕事が続きますが、「事実確認と選択肢の提示はAI、判断は人間」という分担で進めています。
総務では、グループ会社の商号変更・本店移転に伴う各種届出の整理、法定台帳(古物台帳)の要件を満たした再構成などを実施しました。コミュニケーションツールのLINE WORKSでは、78ライセンスの利用実態を監査ログから棚卸しし、削減候補14アカウントを特定。契約更新時のコスト削減につなげる予定です。
単発の依頼だけでなく、スケジュール実行の仕組みに載せた業務もあります。毎朝4時には、メール・ビジネスチャット・カレンダー・タスクを横断した朝のブリーフィングが自動生成され、起きたらその日の全体像がわかる状態になっています。週末には会計データの自動同期と、AI利用状況の週次レビューが走り、四半期ごとのアカウント棚卸しも定期タスクとして登録済みです。
少し変わった取り組みとして、「AIの使い方をAIと一緒に最適化する」こともしています。作業の重要度に応じて高性能モデルと軽量モデルを使い分ける基準を文書化し、AI自身に利用ログを記録させ、週次レビューで「この作業はもっと軽いモデルでよかったのでは」を検証する運用です。品質を優先しつつ、無駄なコストだけを削っていく形が回り始めています。
約30件の業務を任せてみて実感するのは、AIエージェント活用の成否は「何を任せるか」よりも「どう任せるか」で決まる、ということです。当社では、いきなり成果物を作らせず、方針の複数案提示→構成の承認→作成という3段階の承認フローをルール化しています。また、事実と推測を区別させる、不明点は推測で埋めずに番号付きで確認させる、社外に出る情報の匿名化ルールを守らせる、といった運用ルールを整備してきました。
その上で、最終判断と承認、お客様とのコミュニケーションは必ず人間が行います。AIに任せるとは仕事を手放すことではなく、確認と判断に自分の時間を集中させることなのだと感じています。同じように少人数で多くの業務を抱える経営者の方にとって、この棚卸しが「どこから任せるか」を考えるヒントになれば幸いです。